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昭和の食生活

甘酒......心の傷まで治してくれる、飲む点滴・甘酒

2016年11月19日(土)07時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

karinsasaki-iStock.

<最も体にいいのは「昭和の食生活」。しかも、安くて美味く、調理も簡単だ。和食を知り尽くした食文化史研究家の永山久夫氏(85歳)が、自らの若く貧しい時代を支えた「食の知恵」を初公開。今回は日本の伝統的なノンアルコールドリンクの甘酒>

 東北大学大学院農学研究科の都筑穀准教授の研究によると、昭和50(1975)年ごろ、日本の一般家庭で採られていた食事が最も健康的だという。あらゆる種類のダイエット法が登場しては消えていく中で、この研究は話題となった。「やはり和食が一番」という通説を裏付けるものでもあった。

 そんな「昭和の食生活」を自ら実践してきたのが、食文化史研究家の永山久夫氏だ。昭和7(1932)年、福島県生まれ。漫画家を目指して上京し、結婚、一児を授かるが、妻が病死。以来、貧乏暮らしをしながら仕事と子育てを続けた。昭和50年に『納豆沿革史』を上梓した永山氏は、以後、食文化史研究家として活躍するようになる。

 現在85歳、和食を知り尽くした永山氏が、自らの貧しかった時代を支えた「食の知恵」を初公開したのが新刊『ひと月1万円!体にやさしい 昭和のシンプル食生活』だ。当時の食生活を振り返るエッセイを織り交ぜながら、基本食材と121のレシピを紹介している。

 ここでは本書から一部を抜粋し、5回に分けて掲載する。第4回は「2章 永山久夫が食べてきた昭和のシンプル食材10」より。


『ひと月1万円!体にやさしい
 昭和のシンプル食生活』
 永山久夫 著
 CCCメディアハウス

※シリーズ第1回:ご飯を最後に食べる「会席料理式ダイエット」のすすめ
※シリーズ第2回:高野豆腐......凍り豆腐(高野豆腐)は植物性タンパク質の王様
※シリーズ第3回:1日おきに魚と肉......栄養のかたよりを防ぐ永山流食事法

◇ ◇ ◇

④甘酒......心の傷まで治してくれる、飲む点滴・甘酒

 甘酒は、米麴とやわらかめに炊いたご飯を混ぜ、一晩寝かせて作る日本の伝統的な甘味ドリンクで、江戸の町では、冬はもちろん、夏を乗り切るための必須健康サプリメントでした。

 一晩発酵させただけででき上がるところから、「一夜酒(ひとよざけ)」とも呼ばれたノンアルコールドリンクです。最近では「飲む点滴」ともいわれて人気がありますが、スタミナ切れしたようなときに飲むと、即効性があります。

 入院患者になじみ深い点滴の主な成分は、ブドウ糖やアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどですが、甘酒はその成分に近いのです。点滴のような作用に加え、発酵食品ですから、麴酸や乳酸菌、酵素などが豊富に含まれています。それらの生菌効果によって、整腸作用のほか、免疫力の強化などに役立つのです。

 私は生家が福島県の麴屋だったせいもあり、上京して何十年になりますが、今でも甘酒は手作りしています。好きなのは、ちょっと発酵が進んで少し酸っぱくなった甘酒。つまり乳酸菌の多い甘酒で、私にとってはヨーグルトのような存在です。その甘酒を3日に1回はこまめに手作りして、毎朝、大ぶりの湯飲み茶碗1杯飲んでいます。そのせいか、飲んでしばらくすると腸が動いて、便意があります。ですから、私は便秘に苦しんだことはありません。

 ヨーグルトなど腸にいい乳酸菌飲料には女性ファンが多いようですが、甘酒はそれら以上に体にやさしい飲み物。肌の艶が落ちてきた中年女性、冷え性に苦しむ女性、体力が衰えてきた中高年に飲んでいただきたい発酵食品です。買うと高いので、酒粕でも作れる甘酒を手作りしましょう(作り方は212頁で紹介)。

 まとめて作っておく場合、人肌よりもちょっと高めの温度で一晩寝かせると、甘みの強い甘酒になるので、冬は3〜4日、夏は2日で飲みきってください。やわらかめのご飯に混ぜれば、さらにおいしいご飯になります。

 最後に、胸にしまっておいた、甘い甘酒の酸っぱい思い出。

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